第3回 賀戸久先生記念研究会を開催



先端電子技術応用研究所(以下、電子研)主催による「賀戸久先生記念研究会」が1119日()に21号館503室で開催されました。電子研では、平成2212月に亡くなられた賀戸久前電子研所長の業績と高い志を讃え、これを永く記念するために研究会を定期的に開催しており、今回はその第3回目として開催されました。

  研究会には、石川憲一学長、泉屋吉郎法人本部長をはじめ、学内外から賀戸先生と親交の深かった30人程が参集しました。懇親会も兼ねた昼食の後、研究会は上原弦電子研所長のあいさつに続き、以下の講演が行われました。

Alec Marantz先生:ニューヨーク大学(金沢工業大学客員教授) 
      「MEG technology drives progress in cognitive neuroscience:
                 The KIT/NYU Lab and Linguistics」 


   ② 関原謙介先生:首都大学東京 
      「生体磁気計測:生体活動の推定と可視化」


   ③ 足立善昭先生:先端電子技術応用研究所 准教授 
      「脊磁計の開発と応用」

 Marantz教授は専門の言語学の分野で先端的な研究をされ、脳磁計のポテンシャルに早い機会から注目し、1990年代前半、超伝導センサ研究所においてまさに脳磁計を生み出そうとされていた賀戸先生を訪ねた事が、脳磁計実用化に向けたきっかけとなりました。 
 1995年、樋口正法電子研教授、尾形久直電子研教授らの超伝導センサ研究所メンバー数名とともに金沢工大に着任し、1998年、Marantz教授が当時勤めていたマサチューセッツ工科大に脳磁計第1号機を晴れて設置し、MIT/KIT共同脳磁研究所を設立いたしました。
 Marantz教授はニューヨーク大に移籍した後にもKIT製の脳磁計を使用し、言語学に関する研究を続けています。今回、ニューヨーク大学-マサチューセッツ工科大学-金沢工大のコラボレーションの紹介や、単語認識における脳の反応に関して脳磁計を使った研究成果について講演されました。

 関原先生も同じころから脳磁計に特有の逆問題の難しさに挑戦し、現在ではその研究分野での最先端に立っており、世界の生体磁気研究の歴史を作ってこられました。今回は聴衆の裾野が広いこともあり「数式を使わずに」とのリクエストをした上での講演となりましたが、生体磁気計測における信号解析の基礎から最新の研究、更には臨床展開への可能性について分かりやすく説明していただきました。
 また、関原先生は1990年代後半に賀戸先生と強烈なインパクトとともに出会ったとのことで、そのエピソードを紹介した際には会場は笑いに包まれました。


  足立准教授は脊磁計の開発について講演しました。脊磁計は、脊髄における信号伝達の様子を超伝導センサ(SQUID)で計測し、椎間板ヘルニアや脊椎症性脊髄症などの脊髄変性疾患を機能的に診断する装置です。電子研では東京医科歯科大学と共同して1998年頃から脊磁計の開発に着手し、世界で初めてヒトの脊髄誘発磁場を計測し、現在では実用化の目前まで迫っています。
 今回の講演では、賀戸先生とともに東京医科歯科大学を初めて訪れた時から現在に至るまでの苦労話やその解決までの経緯など、賀戸久先生記念研究会ならではの内容を紹介しました。

 
 今回で第3回目を迎えた賀戸久先生記念研究会ですが、来年は11月頃に東京での開催を予定しています。