BIOMAG2012 小山講師がYoung Investigator Award を受賞



小山大介(おやま・だいすけ)講師が、826日(日)から30日(木)にフランス・パリのMaison de la Chimieで開催された18th International Conference on Biomagnetism (BIOMAG2012:国際生体磁気学会)で「Young Investigator Award」を受賞しました。
 Young Investigator Award (以下YIA)は学位取得後5年以内の若手研究者を対象として、「Application (応用)」、「Models and Methods(モデルと解析方法)」、「Instrumentation(機器開発)」の3部門で1名ずつに贈られおります。
小山講師は34名のエントリーの中から、Instrumentation部門のYIAを受賞しました。日本を含めてアジアから唯一の受賞となり、授賞式に参加していた日本人研究者たちのテーブルから歓声が湧きあがりました。

これまでYIAは優秀なポスター発表の中から選ばれていましたたが、今回は発表アブストラクトに加えて予め提出した業績リストを使っての審査となりました。脳磁計の開発だけでなく、心磁計や低磁場MRI、ノイズキャンセレーション、脳磁計評価用ファントムの開発など、包括的な研究の推進が評価され、今回の受賞につながることができました。小山講師が電子研に来て3年間の仕事が評価されたこととなり、電子研としても鍛えがいがあったと感じています。



授賞式が行われたパリ市庁舎(Hotel de Ville)は19世紀に建造されたルネッサンス様式とベル・エポック様式が混在する壮麗な建物であり、世界遺産にも含まれています。このような由緒ある場所で受賞できたことは大変名誉なことです。
(2012年10月25日)
 

受賞した小山講師と記念撮影
(右:小山講師、左:樋口教授)


金沢泉丘高校SSHが脳磁計を見学




623日(土)、金沢泉丘高校SSH(スーパーサイエンス・ハイスクール)の生徒15名と教員2名が先端電子技術応用研究所(以下、電子研)を訪れ、脳磁計や研究所施設の見学を行いました。

金沢泉丘高校SSHでは毎年、海外における大学での講義・実習や博物館等の見学をとおして科学技術や語学に対する学習意欲、国際性、将来海外へ出て活動しようとする意識を高めることを目的とした海外研修の取組を行っています。

本年度は82日から9日にかけて米国のニューヨークやワシントンを訪れる予定ですが、今回は本学プロジェクト教育センター所長 松石正克教授のご紹介で、ニューヨーク大学のNYU-KIT共同脳磁研究所を訪問することになり、その事前学習会が天池自然学苑内の電子研で開催されました。


泉丘高校SSHの生徒たちに脳磁計について説明する小山講師
はじめに天池自然学苑の講義室で、電子研の小山大介講師が「NYU-KIT共同脳磁研究所の要」、「脳磁計の仕組み」について解説しました。
今回は特に、「普段学習していることが最先端の技術にどのように生かされているかを説明してほしい」と担当の先生からリクエストがあったことから、高校で習う物理や数式を交えながらのレクチャーとなりました。また、脳神経活動と薄膜技術など、普段は全く結びつかないことが融合することで脳磁計という最先端技術が実現されていることなどをわかり易く説明し、高校での学習が将来につながっていることを生徒たちも認識したとのことです。



続いて場所を電子研内の脳磁計室に移し、実際に脳磁計を使いながら研修における注意点などを説明しました。携帯電話は必ずOFFにする(マナーモードでもNG!)などの実演も行われ、高校生たちも真剣な眼差しで説明に聞き入っていました。

最後の質疑応答では脳磁計に関する鋭い質問もあり、生徒たちの関心の高さがうかがえました。この事前学習を踏まえ、NYU-KIT共同脳磁研究所での研修が実り多いものになることを期待しています。

(2012年10月25日)

アブダビ首長国にKIT/NYU共同脳磁研究所発足

金沢工業大学先端電子技術応用研究所と米国・ニューヨーク大学神経言語学研究所は、UAE(アラブ首長国連邦)アブダビ首長国にKIT/NYU共同脳磁研究所を設立し、その開所式が現地時間
4月23()午後2時30分から共同研究所のあるニューヨーク大学アブダビ校、センター・オブ・サイエンス・アント・テクノロジで行われました。

本学からは石川憲一学長をはじめ、共同研究に 携わる先端電子技術応用研究所の研究員が参加しました
ニューヨーク大学アブダビ校からは副総長であるAl Bloom氏をはじめニューヨーク本校の神経言語学研究所の研究員の方々、またニューヨーク大学アブダビ校と言語学研究分野で共同研究プロジェクトを推進しているUAEユニバーシティの言語学研究者の方々が参加され、合計で40人を超える参加者による盛大な開所式となりました。

このKIT/NYU 共同脳磁研究所については開設前より、在UAE日本大使館の方々にご興味を持って頂き、研究内容やKITとニューヨーク大学の共同研究の歴史について説明行っていましたが、この開所式にも2人の大使館員の方にご参加頂きました。


開所式終了後記念写真におさまる石川学長ら
開所式のあいさつで、石川憲一学長は故賀戸久教授とニューヨーク大学アレック・マランツ教授の出会いについて触れられ、当時のお二人が強い共通の目的意識をもってお互いの分野で協力し合った結果として日本での実用的なMEG装置が完成し、その後も多くの海外研究者との協力により先端電子技術応用研究所がイノベーションを続けてきたことを強調、この地でのKITとニューヨーク大学アブダビ校の連携により新たなるイノベーションがスタートすることを期待している、とのお言葉を頂きました。

当研究所に設置されたMEG装置は、これまで我々が研究を進めた成果を集大成したものです。より良い信号品質を求め雑音低減機能を付加したセンサ駆動回路をはじめ、センサの高機能化を目指したハイブリッド型センサモジュール、データの信頼性を向上させるための記録装置の再設計や被験者の頭部位置検出装置の開発、メンテナンス性を向上させるための周辺機器の改善をしました。
現在64のセンサを実装して計測を開始していますが、この7月にセンサ数を224本へと増設し、より高解像度の計測が行えるようになります。

当研究所ではこの最新のMEGをニューヨーク大学アブダビ校の重要なプロジェクトである言語学の分野における脳による言葉の認識や、文章理解などの謎を探求する重要なツールとしてだけでなく、広く神経科学全般の研究に利用していく予定です。
そのため、現在神経科学分野で一般的に使われている脳波計やアイトラッカ(眼球運動追尾装置)などの検出・記録装置を装備し、MEGによる脳機能計測と同時計測を行うべく準備を進めています。これにより、今まで単独の計測装置で行われてきた計測結果による脳活動の解釈に異なる側面からのデータが加わり、新たな知見をもたらす可能性があります。
また、研究範囲の拡大により、より多くの広い研究分野の研究者との間で議論を深めることが可能になると同時に、新たな脳磁計応用分野の開発が期待されます。

KIT/マックゥェーリー共同脳磁科学研究所           


語学の分野で研究成果

~人は生まれながらにして言語についての論理構造を備えている~



先端電子技術応用研究所は脳磁計の応用研究のために海外の研究所との連携を進めておりますが、その一つであるオーストラリアのマックゥェーリー大学内に設置されたKIT/マックゥェーリー共同脳科学研究所ではヒトの言語認知のメカニズムを解明する研究が進められています。
ここでは小児の時期に言語能力の発達が著しいことに注目し、小児専用の脳磁計を用いて、言語学における「生成文法仮説」すなわち「ヒトは生まれながらにして言語についての論理構造を備えている」という仮説を検証すべく研究を行っています。

図は小児の語学学習に関する国際共同研究の成果を報告したものですが、修学前の小児が文法に誤りのある文章に対して脳の特定の部分が強く反応することが示されています。

また同大学は北京語言大学(日本名:北京言語文化大学)との国際共同研究を通じて、反応部位は母国語が中国語の小児と英語の小児で同じであるなどの知見を得ており、今後のヒトの言語能力獲得のメカニズムの解明に役立つことが期待されています。